睡眠のしくみと心身との関係
現代の睡眠事情を知る

日本人の睡眠状況
睡眠は人間にとって非常に重要であることは知っていても、なかなか忙しくてしっかりと眠れていない・・・という人が多いのではないでしょうか。NHKの国民生活時間調査によると、調査が開始された1960年と2015年を比較して日本人の睡眠時間は1時間ほど減っています。ちなみに、総務省統計局の調査(平成28年)によると、全国の平均睡眠時間(10歳以上,土日を含む週全体の平均)は7時間42分でした。
また、日本人の睡眠時間は世界的に見ても少ないことをご存じでしょうか。経済協力開発機構(OECD)の国際比較調査によると、日本人の睡眠時間は、アメリカ、フランス、イギリスなど欧米先進諸国と比べると1時間ほど短く、なんとOECD加盟国の中で、最も睡眠時間の短い「睡眠不足大国」なのです。さらに、東京、ニューヨーク、上海、パリ、ストックホルムに住む人を対象に、味の素㈱が行った世界5都市睡眠意識調査によると、東京の平日の睡眠時間は5都市の中で最も短い、5時間59分でした。
日本人が睡眠不足になる3つの理由
日本人、その中でも特に働く世代の男女に共通する「睡眠不足になる理由」は大きく分けて3つあります。
1)労働時間
経済協力開発機構(OECD)の国際比較調査によると日本人の労働時間は、年間では減少傾向にあるものの、平日1日あたりの労働時間は増えています。特に残業時間が圧倒的に長く、米国やフランスの約3倍にも及んでいます。
2)通勤時間
通勤時間の長さも睡眠時間を確保できない一因です。NHK国民生活時間調査によると、勤め人が通勤にかける時間は 1時間 6分。特に都市部でその傾向が顕著で、通勤時間と睡眠時間が完全に逆相関しています。都市部で働く人の多くは、通勤ラッシュと睡眠不足が重なっている状態です。疲れとストレスがたまるのも無理はありません。
3)スマホ利用時間
IT機器の使用時間が格段に増えたことも睡眠不足の要因の一つです。総務省の発表によると、インターネット利用時間(平日1日あたり)を2012年と2016年とで比較すると、全体で38分から61分と1.6倍に増加しています。
また、東京都が睡眠不足の人に原因をリサーチしたところ、過半数が「スマホとパソコン」を挙げています。IT機器の過剰な利用は、睡眠時間が削られるだけではありません。IT機器の液晶画面から発せられるブルーライトは睡眠のリズムを乱すと言われています。
さらに、就寝前にSNSやメールなどネット上でのコミュニケーションをすると、感情が揺さぶられ、覚醒度が高まり、睡眠の質が低下します。
このように、長い労働時間、通勤時間、そして、スマホ利用時間などが、私たちの睡眠時間を圧迫し、慢性的な睡眠不足を引き起こしているのです。
睡眠負債
「睡眠負債」は、ウィリアム.C・デメント教授(スタンフォード大学)により提唱された言葉で、日々の睡眠不足が借金のように積み重なり、心身に悪影響を及ぼすおそれのある状態のことを指します。
わずかな睡眠不足が積み重なり「債務超過」の状態に陥ると、生活や仕事の質が低下するだけでなく、うつ病、がん、認知症などの疾病に繋がるおそれがあると言われています。
睡眠負債は、自覚しないままに脳と身体にダメージを与える危険因子が蓄積されていく状態です。非常に恐ろしい状態ですが、あまりに無頓着な人が多いのが現状です。